最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)1270号 判決 1963年10月24日
豊中市服部本町五丁目四六番地豊中アーパート三八一号橋口方
上告人
小田栄吉
西宮市池田町九五番地
被上告人
西宮税務署長
阿万敏平
右当事者間の審査決定等取消等請求事件事件について、大阪高等裁判所が昭和三七年七月三一日言い渡した判決に対し上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由第一点について。
しかし、乙第一号証の一、二と同第二、三号証との間に関連性がないとは認められない、すなわち、乙第二、三号証は乙第一号証の一、二の書留郵便の内容であると認められないこともないのである。それ故、所論は採用できない。
同第二点について。
しかし、乙第一号証の二に受取人の氏名として、「小田栄吉同居人宮本進殿」と記載されていたからといつて、その一事だけで被上告人において、上告人が所論の場所に居住していなかつたことを知つていたものと必ずしも推認できるわけのものでもない。故に所論も採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤朔郎 裁判官 長部謹吾)
○昭和三七年(オ)第一二七〇号
上告人 小田栄吉
被上告人 西宮税務署長
上告人の上告理由
第一点 原判決は判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背がある。
原判決は第二項に於て
『成立に争のない乙第一号証の一、二、同第二、三号証と弁論の全趣旨を綜合すると控訴人に対する昭和三〇年度及同三一年度分所得税額決定通知書が書留郵便で被告税務署直税課より西宮市平松町四番地控訴人宛発送され同郵便が昭和三三年七月十六日同所において訴外宮本進により受領されたことを認めることが出来る』と判示している。
併し乍ら被上告人が提出した乙第一号証の一、二と同第二、三号証とは直接には何等の関連性はない。即ち乙第二、三号証が乙第一号証の一、二によつて配達が証明される書留郵便の内容であるとは認め難い。
即ち内容証明郵便なら知らず単に書留郵便が送達せられた事実を以てその内容迄確定することは吾人の経験則に反するものである。
この点原判決は判断を誤つたものである。
第二点 原判決には理由不備乃至齟齬の違法がある。
原判決は第四項に於て『控訴人は仮に本件決定通知書が西宮市平松町四番地に配達されているとしても、被控訴人は控訴人が同所に居住していないことを知りながら宛名を「小田栄吉同居人宮本進」としてこれを発送したもので、現に控訴人の手中に到達しなかつたものであるから、本件再調査請求は法定の期間徒過の理由のみで却下さるべきではないと主張するが、被控訴人において控訴人が当時西宮市平松町四番地に居住していなかつたことを知りながら同所に前記通知書を発送したことを認めるべき証拠はないし』と判示している。
乙第一号証の二によれば受取人の氏名は「小田栄吉同居人宮本進殿」と記載せられている。郵便局の取扱によれば右は発送人たる被上告人に於て宛名を特に「小田栄吉同居人宮本進殿」と記載して発送したものであつて郵便配達人に於て、「小田栄吉」宛の書留郵便を便宜的に同居人と推定される宮本進に配達したものではない。
原判決は斯る明白な郵便物取扱の事実を誤解したものである。
即ち被上告人に於て上告人が当時西宮市平松町四番地に居住していなかつたことを知つて居ればこそ態々同居人宮本進宛と記載したものであることが推認し得るのである。(上告人が居住して居れば態々同居人宛に発送する理由がない。)
この点原判決は理由不備乃至齟齬の違法がある。 以上